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過去に一度だけ、早朝の築地に遊びに行った事がある。
銀座周辺で飲み明かした朝、築地でラーメンでも食べてから帰ろう、と誰かが言い出したのだった。勢いに任せて築地に乗り込んだまでは良かったのだが、遊びに行ったというよりは迷い込んでしまったという風情たっぷりな僕たちは、早朝の築地市場ですっかりエイリアンだった。ターレという業務用の車がそこら中を走り回っていて何度も轢かれそうになるし、みんな忙しそうだし……。どう見ても酔っぱらいの足取りで、ウロウロとラーメン屋を探しているうちに気づいた。僕たちはエイリアンですらない。 |
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メキシコ産、バリ産など海外のマグロも多い |
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場内で働く人たちには、僕たち部外者の姿なんて全く見えていないのだ。ドラえもんの道具に、被ると石の様に存在感がなくなってしまう帽子があったが、まさしくあれを被った様な状態だった。 |
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あれから数年が経ち、再び早朝の築地市場を訪れる事になった。今回はちゃんとした取材なので中島水産の田中さんが場内を案内をしてくれる。朝の4時に待ち合わせて、田中さんの後に続き場内に足を踏み入れるとすぐに、今回も築地市場の勢いに圧倒された。相変わらずターレには轢かれそうになるし、人々は忙しそうに動き回っているし、田中さんの歩調が速いので何度も見失いそうになるし。とにかく場内にいる人たち全員のテンションがピークに達していて、今が朝なのか夜なのか分からなくなってくる。
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そして気付くと目の前に数百体のマグロが整然と陳列されている場所へ。朝一番にマグロ数百体。誰かの夢の中みたいな光景だが、仲買人たちは表情一つ変える事なく、マグロを吟味してメモを取っている。「尻尾の脂の乗り具合を見て、マグロの状態を確認してるんです」と田中さんが教えてくれた。見ると全てのマグロは尻尾が切り落とされている。この尻尾の断面が、これから行われる競りでの重要な判断材料となるらしい。 |
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