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人は、自分の郷土の魚について薀蓄を語りたがるものだ。 ある日、仕事で、ボクの田舎(岡山県倉敷市)に帰郷したときのこと。 同行するのは、岡山に来るのは初めてとなる新潟出身の入社一年目の新人マネージャーだった。その日の夜、ボクは彼を行きつけの居酒屋へ誘った。 「あの〜岡山の名産って何ですか? 最近、B級グルメの大会で岡山は上位みたいですけど……」 「ああ『蒜山(ひるぜん)焼きそば』とか『津山ホルモンうどん』だろ? あれは県北の話。瀬戸内だから魚に決まってんだろッ? ママカリや下津井のタコとか名産は数々あるけど、とにかくキミに食べて欲しいのは、これだよ!」 そう言ってボクが注文したのは、鰆(さわら)の刺し身だった。 そこから岡山県人にとって、鰆愛がどれほど強いものなのか滔々と語った。 「いいかい? 四国や九州でも水揚げがあるみたいだけど、消費量でいえば岡山県が全国の3割! 凄いだろ? 昔から旨いサワラは岡山に集まる≠チて言うの。でも身が柔らかいから、崩れやすくて傷みやすいのね。サワラを刺し身で食べる風習は、岡山以外にない! 憶えときな!」 これ以上はないだろう、ドヤ顔で語ったボクの話に大将も頷く。 「確か……サワラって、漢字で書くと、魚へんに春をあてたヤツですか? ってことは、旬はやっぱり春ですか?」 恐らく寿司屋の湯のみ茶碗で得たであろう知識に対して、ボクも雑学で返す。 「そりゃ春先が旬だろうな! その当て字だって、産卵期の4〜6月に瀬戸内海へ群れをなして出現すると春を知る――ということから作られたって話しだぞ。こっちじゃあ、昔からサワラが来ないと春が来ない≠チて言われてるぐらいだよ! ねぇ大将?」 すると大将は申し訳なさそうに口を開いた。 「……それは、でぇれぇ誤解なんです。サワラは産卵前の1〜2月頃の方が、よぉけ脂も乗ってて、この時期は寒鰆≠「うて、いちばん美味しいんです」 嗚呼……得意気に話していた自分が恥ずかしい! 新人マネージャーとの間にも、すっかり気まずい空気が流れた。 旅の恥はかき捨てというが、ここは自分の故郷だけにそうはいかない。まさにサワラぬ神に祟りなし≠ナあった。 |
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