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京都風は上品だよ。空豆を裏ごしてペースト状にした物に、山椒や木の芽を少し入れて、柚胡椒を練って加えたソースを貝柱にほんのりと塗って炙った一品。お洒落だよね。この店はかすかに水琴窟の音が響き、ほのかに蚊取線香の香りが漂っている落ち着いた雰囲気の京都のお茶屋さんだった。料理は、お皿によって味がより引き立つからね。先付けや八寸のような、小降りの入れ物に少し入っているお料理が印象に残ったりする位。骨董ではなかったけれど、旅先で面白い小鉢を買い集めたりして、家も皿には凝っていたよ。 産地で食べると食が進むよね。以前、サンフランシスコで俺一人で80個の牡蠣を食べた事があるよ。持参したMYポン酢で味付けしてね。『力也、お前はちょっとクレイジーだ』って言われたけど(笑)。今は海外でも、醤油があるけれど、持ち運びは簡単だから好きな調味料は持っていくと良いよ。新鮮なものを現地で食べるのが最高だからね。 やっぱ、その土地のものが好きなんだよね。産地で美味しい食材に出会って、(東京に)送ってもらって家で食べてみても、(産地で食べた時の)素材一つ一つがもっと引き立ってた感じと何かが違う。美食家の北大路魯山人は、そこを追求していたんだと思うよ。そこの土地の匂いだとか空気、そして水や風の音。何より、その土地の人との交流が関係してるんだろうな。魯山人からは、最高の文学や哲学みたいなものが感じられる。彼の、そういった五感で感じて食している生き方は、本当に、憧れるね。 |
撮影=岩瀬陽一 |
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