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ふぐは大好きですよ。ただ、小さい頃は食べませんでした。東京の下町ってふぐは別のものなんです。下町は「鱈ちり」。うちの祖母なんかは生涯ふぐは食べないって決めてた。あたったら怖いって。昔の人間は迷信で食べたり食べなかったりするから。母親も食べない。僕が連れて行って60才で初めて食べた。人って年とると食べつけてない物をなかなか食べない。食べ物って好奇心を持っていないと、初めての物って人間なかなか食べないんですよ。というのは人間の五感の中で味覚が一番保守的なの。だから新しい物に手を出そうという気にならない。僕も危うくガイドブックの仕事をしていなかったら、生涯ふぐを食べなかったかもしれない。25才ではじめてふぐを食べました。特にふぐが高級でおいしい食べ物だなんて東京の下町の人間は思ってもいない。鯛から始まって白身は関西。東京は鮪、鰹の赤身です。 今から10年位前、有楽町のアピシウスというレストランの料理長・高橋さんとトリュフの採れるところまで行って20キロくらいトリュフを買ってきたんです。実はトリュフの採れるところの仲買人さんの家のマダムが、トリュフは卵と相性がいいからってオムレツを作ってくれたんだけど、黄色いオムレツじゃなくて、トリュフで黒いオムレツなの。ものすごくうまい。こちらは高橋さんと相談して、トリュフを薄切りにしてといっても結構厚いんだけど、天ぷらにして粗塩をのせて食べさせたらうまいって言ってくれたの。翌日は、それだけじゃつまんないから、トリュフとジャガイモを棒切りにしてかき揚げにしてあげたら、これまためちゃくちゃおいしい。 帰りの飛行機の中で、ひょっとしたらふぐの白子にトリュフ合うよって。フォアグラとトリュフって相性いいでしょ。それからひれ酒のかわりに入れてみようってことになって、皆で集まり服部幸應先生もいたんだけど、ちまちまやってるんじゃないよって、お酒をやかんに入れて、トリュフをナイフでちゃっちゃか薄切りにしだして入れて飲んだら、大激変化、みんな感動しちゃった。お酒の飲めない人が、トリュフ酒なら飲めちゃうんですよ。口当たりがよくて。トリュフってねローマ時代からあるんですけど、そもそも催淫剤って言われてるんです。女性を淫らにさせるって。だから昔から、男が彼女口説く時にトリュフを食べさせた。でも日本のレストランに出てくる5g、10gじゃだめですよ。すくなくても20gぐらい食べさせないとその気にならない。でも本当、トリュフってフランス語でアフロディジアックって言われて淫らな気持ちをもようする催淫剤。でもふぐの時は20人位でやったんですけど、ハイになって、笑いキノコですね。何か言うとおかしくて、興奮しているから時を忘れておしゃべりする。 |
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その時の一番最後のお雑炊に普通あさつききざんで入れますよね。その代わりに卵をといて入れてその後みじん切りにしたトリュフをばらばらばらっと入れて蓋して、ぱっとあけたらトリュフの香りがブワー。トリュフって油分と相性がいい、お米と相性がいい、そして卵と相性がいい、みんなお雑炊に入ってるでしょ。これが僕の忘れられないふぐの想い出。トリュフとふぐの同じ季節同士の相性。でもフランス人はやってないね、フランス人ふぐ食べないから。道場さんに教えたら、「料理の鉄人」で作ってましたよ。僕はこういう悪戯するのが凄く好きなんですよ。ふぐの出汁のトリュフ雑炊10回位食べたかな。 ここにトリュフがあればやるんですけどね。でも、12月にならないと、新しいのが出ない。フランス産のは猛烈高いけど、中国産のは安いの。フランスの10分の1くらい。それでやってみるといいですよ。香りもちゃんとあります、本物には負けるけど。だからクリスマスによそはフランス料理でトリュフ食べてるけど、うちはふぐでトリュフだってね。東京でふぐを食べる時といえば、クリスマスの日ですね。すいてるでしょ。この日が和食屋さんで一番お客がモテる日なんですよ。ここ10何年クリスマスはずっとふぐですね。ふぐは年が明けた方が本当に白子がおいしくなっていいかなって思いますが、食べ始めるのが僕の場合12月かな。 10 月にフランス料理の本を1冊と、11月に僕が出した最初のガイドブックで紹介した店が20年後にどうなっているかという総決算のような本がでます。以前よりよくなっているか維持しているお店をもう一度紹介しようと思っています。 |
ふく庵 「なかざわ」 営業時間/17:30〜23:00/日・祝日定休 新宿区舟町11 山下ビル地下一階 TEL・FAX: 03-3352-7262 営団地下鉄丸の内線「四谷三丁目駅」から外苑東通を曙橋方面に3〜4分、信号ひとつめの左側 |
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